2010年6月26日土曜日

シャンプーという犬についての話②



<写真は我が家のコンクリートの上で涼んでいるシャンプーです、
いつも落ち着いていて、優雅な感じでした。気がついたら我が家に居て、
いつの間にか去っていく、別に食事をねだりに来ている訳ではなく、
くつろぎに来ているようでした。>



スパイダーが事故か、他殺かで行方不明になってから二週間、夕方になるとシャンプーはう

ちにキッチンの入り口にさりげなく座っています。

 僕が肉の破片やシーチキンの空き缶などを目の前に置くと、

ゆっくりと首をもたげて優しく空き缶を舐めます。

 スパイダーが居た時はその空き缶すら彼に取られていましたが、

シャンプー以外の犬が我が家の敷地内に入ることはスパイダーが断じてゆるさなかったので、

うちのキッチンにシャンプーがいるだけでも、

それは十分にスパイダーの彼女として認められていたのでした。

 「今日もスパイダーは帰ってこなかったな、

お前も俺と一緒に彼の帰りを待っているのか、

今日はスパイダーは帰ってこなかったから、晩飯の残飯はお前にあげるよ、

そうしないと夜中に他の犬がうちのごみ箱を荒らすからな、

きれいに食べてから家に戻ってくれ」

 といって彼女に残飯を食べてもらっていました。

「でもお前はジョンの家の犬だし、スパイダーもレイモンドの家の犬だったから、

さすがにお前はうちの犬としては認められないよ、

バヌアツの人にウラは犬泥棒だと言われたくないからね、

食べたらすぐに戻るんだよ」

 そういう僕の気持ちがわかるのかどうかはわからないけど、

シャンプーは僕の晩飯の時間が終わると、気が付いたら姿を消しています。
 
 あとから気がついたんのですが、彼女はそれぞれの家の晩御飯の時間を
把握していて、夕方の4時ごろから、8時くらいにかけて、

それぞれの家を回って食事をもらったり、残飯をあさったりしているようでした。

 雄犬達は自分達の縄張りをきちんと守って生活していますが、

雌犬のシャンプーは縄張りは持たず、したたかにそれぞれの場所を回っては

食事をえているようでした、雄犬達もシャンプーにはそれほど攻撃はせず、

シャンプー自身も他の犬の嫌がるようなことは決してしない犬でした。

 他の犬に自分の食事を横取りされても、おこるそぶりも見せずに、

フラフラと去っていくような犬でした、そのけなげさで、

バヌアツで生き抜いていけるのか?隊員達のあいだでは常に不思議がられていました。

体は大きいのに、犬のくせに猫背で、まっすぐ歩いているのに、

どことなく斜めに進むその姿に、なぜか哀愁を感じるのは僕だけでは無かったと思います。