2010年7月23日金曜日

憎めない社会主義国家の男について



アルバニアから来たバレラは独立前はソビエト連邦の男、

社会主義国家の男なのです。

 一般的に僕達の思い描く白人は明るくて、陽気なかんじですが、
バレラはアジア人以上に笑いません、

ネットで見たらリトアニア自殺者が世界一だったこともあるようです。

少し暗い民族なのです。

そんなバレラがなぜボランティアプログラムに参加してアフリカ

に行こうと思ったのかはよく分かりませんが、

やっぱり彼も自分の人生にたいしてイロイロト考えることが

あったのだと思います。

アジア人よりも英語が堪能な彼も時にヨーロッパの人達の

文化や習慣に戸惑っているように感じます。
 
「ロシア人とドイツ人(ゲルマン)の人達は正直すぎて嫌われるんだ」

ってイギリス人から聞いたことがあります、イギリス人も日本人の僕から

みたら相当正直で合理的だとおもうけど、

その彼らが言うのならそれは相当なのだと思います。

 そんなバレラはロボットのように働きます。

掃除でも仕事でも徹底的に合理的、そして絶対に時間内に終わろうとしますし、

遅い人を助けるようなことは絶対にしません。自分の時間内で、

自分のできる範囲の中でベストを尽くすのが彼です。

 だからある意味ではとても信用できるけど、

たまに合理的すぎて腹が経つことがあるし、融通が利かないので、

トラブルがおこったときには困ります。

一緒に車に乗っていても運転の仕方がとても合理的、譲り合いの精神はあまりありません。

助手席に乗っていてヒヤヒヤすることもあります。


 食事の時間が7時から8時と決まっていたら、

8時になったらまだみんなが食べていても普通に片づけだすのがバレラです、

誰かがにこやかに
 
「バレラ、ちょっとだけ待ってよ」

っていっても、普通に真顔で

「8時だから!」

 というのが彼です。でも自分が逆の立場になっても絶対に文句を言わないのも彼です、

そういう面では筋は通っているのです。

 そんな彼もここにきて既に8カ月、戸惑いながらも大分変化してきてと思います。

 人に助けれもらってうれしいという感情を出すようになったし

「アリガトウ」

って小さな声で恥ずかしそうにいうようにもなりました。

 基本的に彼は日本人であるケイタと僕にはとても親しみを持っていて、友好的です。

 たまに困るのは助ける方法も彼の独特の方法なので、

こちらのやり方を無視して、助けてくれるので、嬉しいのだけど、戸惑います。

 でもそれがバレラだと、助けてくれる行為だけでも嬉しいので、

ケイタも僕も我慢できます。

 不器用な男が一生懸命に助けようとしてくれていることに何故か感動できるからです。

 そして実は彼はとても二枚目です。

 イギリス人のユアン・マクレガー という俳優と、

ハリウッドのジュード・ロウ を足して二で割ったような顔をしています。

 そして無口で良く働く、もう少し自分の優しい感情を表現できれば

きっと女性にも持てると思います。



 そんな彼と先日に車で一日働いた時の出来事、
とても暑い一日だったので、夕方になって彼は

スーパーでイギリスでは結構メジャーな4リットルの水と

オレンジジュースをかって車に戻ってきました。

 おそらくオレンジジュースは今飲みたくって、

水は学校に持って帰って飲もうと思っていたようです。
 
でもその時に僕は気がつきました。 そのオレンジジュースには

「コーディアル」
って書いてあることを、それは日本で言うカルピスみたいな水で薄める

為のシロップなのです、でも金額が70円と安かったので、

彼はただのジュースだと思ったようです。

それを一口飲んで、あまりにも濃すぎるその味に、彼の顔がゆがみました。

「なんだこれ?メチャクチャ濃いぞ!」

「バレラ、それはきっと水で薄めるんだよ、コーディアルって書いてるでしょ」

「そうなのか、だから冷蔵庫に入ってなかったのか」

 ということで、彼はさっそく4リットルの水のほうを空けてそれを

グビグビと飲みだしました、そして空いたスペースにシロップを

入れて一生懸命振っています。

 そしてためしにふた口ほど飲んでみましたが、

4リットルの水ではまだまだ薄かったみたいで、

 「駄目だ」

と言ってもう二口ほど飲んで、それからまたシロップを注ぎました。

 それで既に彼は相当にお腹がいっぱいになっていると思いましたが、

 どうしても味が濃くなったジュースを飲みたかったようで、

シロップを足しては飲み、また足しては飲みしていました。
 
それを隣で見たいた僕は普段は殆どミスをしない彼が珍しく

可愛い失敗をしたことが嬉しくて、

「きっとお腹いっぱいだけど、味が濃いのが飲みたいんだろうな、

そういうところ妥協しない男だよなー」

って思いながら見ていました。

 憎めないソビエトの男、それがバレラです。