2012年7月4日水曜日

京子と中子の間で・・・・


京王線との出会いはある朝に突然訪れた。

僕は毎朝新宿から中央線で八王子に通っているのだけど、この

中央線というのは2日に1度はダイアが遅れる。まあ遅れたところ

ですべての電車が10分とか20分とか遅れるので一本前に来る

はずだった電車に乗れるので問題のないことも多いのだけどね・・・・

その朝も6時40分ごろに中央線のホームにいた、八王子まで約

一時間、快速とかいってもほぼすべての駅に止まる。しかも八王

子から新宿に来る電車が混むの ならわかるが、新宿から八王子

に行く電車も混んでいて、一時間のうちの半分は座れない。家で

朝飯など食べた日には途中で気持ちが悪くなる。 慣れてきたひ 

とつわかったのは吉祥寺や立川の私立の小学校に通っている子

供は必ずその役で降りるので、その子供の前に立っていれば、そ

の駅に着けば必ず席が確保でき る。 大の大人がそんなセコイ

ことを思いついてしまうほどに中央線の朝は殺気立っているの

だ。


そんな僕と中央線のすさんだ関係がダラダラと続いた朝に京王線

に出会ってしまった。

そ の日もいつものように中央線は遅れていた。電車が10分遅れ

ると、そのあと八王子まで約20駅ある中央線の駅のホームに人

があふれんばかりに溜まってし まう。その全員が10分遅れてき

た電車に乗り込もうとする。 青梅線と分かれる立川などでは乗り

換えのためにホームに降りた人と、電車に乗り込もうとした 人が

どちらも一歩も動けず上り階段にも下り階段にも人があふれてい

てお互いに動きようがなくなってホームのモラルは朝から完全に

崩れてしま う。


そんな憂鬱な6通勤が今日も始まってしまう予感がした時40分の

中央線のホームでなんとなく京王という選択肢が頭に浮かんだ。


「そういえば京王線は中央線と並行して八王子まで行っている。少し歩いて京王線の新宿駅に行けば八王子まで座れるかも知れない、座れなくても中央線でなければもうなんだって良い」


少し浮ついた心で京王線 のホームへ行ってみた。 そこには少し

涼しい顔をした「京王八王子行」きが僕を待っていてくれた。 喜

びもせず、嫌がりもせずというかんじであった。しかも大して並ば

なくても席が確保できてしまったのだ。


八王子までの約45分間、本を読んだりうたた寝をしたり、朝から

とても癒されて出勤することができた。 そんな安心感が僕を京子

の虜にし、会社に申請した正式な通勤路である中子との関係を

少しずつ冷めさせていた。


中央 = JR  即ち  国立 (国鉄か・・・)

京王 = 私鉄 即ち  私立


やっぱり田舎者の僕としては国立大学の女性よりも私立大学の

お譲さまに心ひかれるし   京王と打ち込めば変換の仕方に

よっては「慶応 」と僕の意思とは関係なく慶応大学を 連想させる

文字が変換されることもある、中央は何度打っても中央大学だ、

変換のミスはない。 もちろん中央大学は素晴らしい学校だし国

立でもないが、しかし電鉄会社である限り、陸の王者を名乗る「慶

応」という言葉の響きには勝てないのである。

しかしそんな京子との甘い生活はやはり長くは続かないもので、

約2カ月続いた京子との関係も思わぬところで問題が出てきてし

まった。


この三ヶ月間の外勤の交通費の申請の時期が来てしまったのだ。
会社に正式に申請しているのは中子との関係であり、京子との関

係ではない。したがって外勤で中央線に乗った時には定期を持っ

ているという判断から交通費は支給されないことになる。 


しかし今の僕の生活は実質的には京子との事実婚になっている。 

ここで正式に中子との関係を終わらせて京子との関係をオフィ

シャルなものにすれば、中央線を使った外勤にも交通費が支給さ

れることになる。 そして僕の外勤は、日野市、立川市、武蔵野

市、青梅市と圧倒的に中央線沿線の外勤が多いのだ。 これは

馬鹿にならない金額である。 

今まで正式に交際をしていることになっていた中子と別れを告げ

て会社に京子との正式な関係告白すれば、中央線での交通費は

胸をはって申請できる。 事実僕は今中央線での出勤はほとんど

行っていない。 


しかし男として、一度申請した中子との関係を簡単に解消してよ

いのだろうか? という疑問も残る、やはり一度は世の中に計約

を明らかにした間柄ではあるのだ。 

中子に対してひとつ言い訳をさせてもらえばそもそも彼女は僕だ

けを乗せて走っているわけではないのだ。 遠い東京駅からほか

の多くの男たちを乗せており、僕は 途中の新宿から八王子まで

を利用しているだけ、八王子で中子も一緒に終点なのかといえば

彼女は僕を下した後も山梨のほうまで走って行ってしまう、所詮

僕は 彼女の路線の途中から乗り、途中で降りていくという行きず

りの客に過ぎないのだ、それに比べると京子は始発の新宿で僕

の乗車を待っていてくれて、そのまま一緒に 終点の京王八王子

までいってくれる、そこで僕を下して自分はほかの客を乗せてそ

の先に進むようなことはしない。

夕方にはまた京王八王子で僕の帰りを待っていてくれる。そこか

ら本を読んだりうたた寝をしたり新宿まで癒されながら帰る

ことができる。必ず席は確保できるし、ほかの乗客のマナーも決

して悪くない。 

ここはひとつ男として一大決心をするべき時なのか、それとも男

が一度決めた相手を簡単に変えることは許されないのか、アラ

フォー男は毎朝京子との甘えた関係を正式なものにするかどうか

を迷っているのである。 馬鹿馬鹿しくてすいません。

おしまい・・・・