2010年5月10日月曜日

犬のおまわりさん


<写真は親父とは全く関係ないバヌアツの頃の写真です>
 

2006年の春に会社を辞めてから、協力隊の訓練が始まるまでの半年間、

 親父の4回目くらいの癌の転移の手術があったので大阪で一緒にくらしていた。

 癌は転移すると、手術のたびに一番最初に見てもらった先生まださかのぼってお伺い

を立ててから手術するので、今回は肺の手術だけど

最初の舌癌からリンパへの転移をみてくれた病院へ行ってそこの先生の意見を聞かな

ければならない、親父の場合は舌癌を手術してくれた病院では肺がんの手術はできないの

で大阪大学に紹介されてそこで肺がんの手術をすることになっていた。


 毎週のように病院の予約を取って検査を受けて2週間ごに検査の結果を待って、

 過去の病院に話を聞きに行く。 と言うことを繰り返していた。

「こんなことしてるうちにも癌はドンドン進行している、結局は手術できるってきまって

から、今度はまた手術の順番待ちすることになる!」

 転移が見つかってから実際の手術まで2カ月以上かかってしまうのが現状でした。

 その日も11時半の病院の予約が結局2時になって、親父はその間ずっと愚痴。

「お前だったらどうする?」

 を連発するから、心の中では

 「自分だったら死にたいな」 とこっちも言いかえしたいたい気持ちをぐっと抑えて

「ウーン、難しいな」


 と演技していましたが、結局はその演技が親父のイライラをさらに募らせます。

 でもそれが最低であり最高の返事なことは間違いないです、

余計なことを言ってはいけないのです。


 やっと名前をよんでもらって、20分の診察時間のところを親父は40分話こんでいました。

 みんながこうだったら11半の予約が2時になるのも当たり前だな。

 と思いながらも病院の先生達は時間も気にしないで、親父の話がおわるまできちんと

聞いてくれます。

  まあ先生も途中で息抜きしてくれてるんだろうけど、それにしても医者と言うのは忍

耐の居る仕事だなー! と僕はいつも感謝するとともに、関心していました。

  
 その日の帰りに親父の通院の為にかったビッグスクーターの後ろに親父を載せて

二人で病院から帰ってるとき、親父が鼻歌を歌っているのに気が付きました。

 「ニャン ニャン ニャニャーン! ニャン ニャン ニャニャーン!

泣いてばかりいる子猫ちゃん、犬のおまわりさん、困ってしまって

 ワン ワン ワワーン! ワン ワン ワワーン!」

 このフレーズをずっと僕のバイクの後ろでずっと繰り返していました。

 本人は全く無意識だったとおもいます。

 あれはたぶん6月で暖かくて西日の綺麗な病院の帰り道でした。親父は先生に話を

聞いてもらえてことと、診察が終わったことで気持ちが楽になったのか、神経質だった

行きとは全く違う気持ちになっていたのでしょう。

 
 運転しながら親父の鼻歌に気がついてしまった時

 「ふざけんなよー、親父!」
 
 って思って笑ってしまったけど、ヘルメットはフルフェイスなので親父は僕がニヤニヤ

していることを親父は気がつくはずもなく、僕は一人で

 「帰ったらすぐに姉ちゃんに電話して、このことを伝えよう、きっと姉ちゃんも

 お父さんらしいね! って喜ぶだろうな」

 って一人で笑っていました。そしてその通り、その晩に二人で大笑いしました。
 
 それがうちの親父です。笑える人でした。

 

 

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