2010年3月1日月曜日

人で紹介アニワ (老人パトリック)


ワシの名前はパトリック、第二次世界大戦のことは子供ながらに今でも覚えてるよ

 何人かの若者がバヌアツからソロモンまで戦いに行ったんじゃ、ワシはまだいける歳では
 
 なかったがな。
 
  戦争が終わってから結婚して子供が二人居たんじゃが娘のほうはよその島の男と結婚
 
 してしまって今は北の方の島に居る、長男は隣の島のタンナ島から嫁をもらって子供を6

 人作って、それはもう毎日家の中が騒がしかったことといったらなかったわい。
 
 でも今思えばあの頃が幸せだったんじゃな、ちょうど2000年になった年に妻に先立たれ
 
 たんじゃが、それでも6人の孫と一緒に毎日暮らしておった。しかし昨年の10月に急に
 
 長男がこの世を去ってしまったんじゃ、原因は今でも分かっておらん、昼間海に入って 

 魚を沢山採ってきてそれを夜にみんなで食べて、次の日の朝にはもう死んでおった、
 
 村人たちはブラックマジックだと騒ぎ立てたが、病院の無いこの島では本当の原因など分
 
 からんのじゃよ。
 
  6人の孫のうちの二人はすでに首都の高校に通っていたから学費だってかかるし、息子
 
 が死んじまってからは食べるものには困らないが現金収入が無くって困っておった。
 
  挙句の果てにクリスマスを実家で過ごしたいといってタンナ島に残りの4人の孫を連れて

 戻った嫁がすでに3ヶ月も戻ってこんのじゃ、まあ6人の子供とワシの面倒は女一人では
  
大変だろうから、戻ってくるのが面倒になってしまったんじゃろうなうらんどりゃせんよ。
 
 でも長男さえあんな死に方をしなければな・・・・ 
 
 ああそうだ、チーフ・サモリアの話だったな、あいつはすばらしいチーフじゃよ、古いカスタムと 
 
 新しい考え方の両方を知っておるからな。 
 
  バヌアツの今の問題の一つは昔からのチーフ制度と28年前に独立してからできたあた 

 らしい政府の二つの権力があることなのじゃ、首都や大きな島ではチーフの力は弱まり 
 
 政府の力が強くなってきておるのは当然じゃが、アニワ島のように首都の影響をまったく
 
 受けていない小さな島々にとっては今でもチーフの力が絶大なのじゃ、でも一つ問題なの 
 
 は政府はお金を持っているが尊敬されていない。逆にチーフは尊敬されているがお金は
 
 持ってないのじゃ。 なんといってもワシらは昔からお金などつかって生活していなかった
  
 からな。サモリアにも同じ事がいえるな。
 
 そしてもう一つの問題は、若者が進学の為に大きな島にでていってしまう為に、島には 
 
 老人と子供ばかりになってしまっていることなんじゃ、昔ならワシのように身寄りの無くなる
 
者などおらんかった、しかし今後はワシのような老人が多くなるだろうな。 
 
サモリアはそういったことにも気を使ってくれてなるべく多くの若者がアニワに戻ってくるように 
 
 頑張っている。時には若者達から面倒な親父だと思われることもあるみたいじゃが彼が
 
 頑張っているからこそ今のアニワ島があるといっても言い過ぎではないとワシは思っとるよ

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