2010年3月1日月曜日

人で紹介アニワ島 (サングラスの親父)


島のことなら何でも俺に聞いてくれて、俺は第二次世界大戦が終わった時から
 
ずっと島の生活を見てきているからな、これでも若いときは結構女に持てたんだぜ。
 
 戦争が終わったときには俺はもうココナッツの木に登れる歳になっていたから今なら
 
 小学校に行きだすくらいの歳だったとおもうぜ。
 
 あんたは日本人だよな。あの戦争で日本が勝ってくれてたら、今頃は南太平洋
 
 の国々は日本のおかげでもっと発達してただろうな。アメリカはダメだね俺たちのこと
 
 をまったく助けてくれないからな。
 
  チーフ・サモリア、まあよく頑張ってると思うがな、少し俺たちのブラックマン文化をわ
 
 すれちまってるかもな。あいつは島が発展する事が良い事だと思って使命感を持っ
 
 って頑張ってるが俺たちが忘れちゃいけないのは昔からの島のカスタムだと俺はおも
 
 うぜ。
  
  島の代表として首都のチーフ会議に行く役割を今年からチーフ・ディックに譲った
 
 と本人は言っているが、5年に一度の選考の時に皆がサモリアを推薦しなかったと
 
 言うのが本当のところさ。5年前は新しいことに挑戦してくれそうなサモリアに皆期待
 
 したが、俺たちブラックマンは飽きっぽいもんなんでね。サモリアのやり方に少し疲れ
 
 たのさ、新しい代表のディックはおとなしい男だし、計算はできないが、俺たちの生
 
 活をよく理解してくれているよ。むかしから奴の周りにはなんとなく人が集まるんだよ
 
 な。
 
  一ついいことを教えてやるよ、実はチーフ・サモリアは今必死になってリゾートだ

 バンガローだと言ってるだろ、実はあれには裏があるんだ。
 
  アニワには大きなラグーンがあるだろ、空港から近い方の土地は戦後にサモリア達
 
 の村が自分たちのものだと言い出してココナッツやサンダルウッド(ビャクダン)を植えて
 
 それを首都に送っていたのさ、空港が近いからなにかと便利だしな。
 
  そのときにチーフ・ディック達の村は出遅れちまってラグーンの対岸の土地しか手に
 
 いれられなかったんだ。っていうか別に欲しくも無い土地をサモリアの祖父が勝手にあ
 
 たえたんだがな、昔からディックの村の奴らはおおらかだったし、与えられ土地にラグ
 
 ーンをカヌーで渡ってはココナッツを植えたりして少しずつ管理していたんだ。
 
 それが昨年の初めにツーリスト・ボートというホワイトマンたちが乗ってくるデッカイ観光
 
 船がラグーンを見にアニワに来るという話になったんだが、その船を管理してるニュー
 
 ジーランドの会社がラグーンの対岸にあるディック達の土地に目をつけて、ここに観
 
 行客を連れてくるので貝や豚の牙などで作った地元のネックレスなどを売ってはどう 
 
 かと、提案してきたんだな。ディックはきちんとチーフ会議でその事を話し、他のチーフ
 
 達に了解を得て海沿いに大きな家を建ててツーリストボートを待っていたんだ、
 
 でも何故か不思議な事にツーリストボートに島の代表のチーフとして呼ばれたのは
  
 ディックではなくて、サモリアの方だったんだな。まあサモリアは昔から首都にも顔が
 
 利くからな、そしてツーリストボートはディック達が作ったお土産屋には立ち寄らず、
 
 沖でシュノーケリングだけして帰ってしまったんだ。後でサモリアが言った理由は
 
 「大きいな客船は浅いラグーンには入れなかったみたいだ」
 
 と言っていたが、まあそこは想像にお任せするよ。
 
 ディックか? あいつはそんな事気にする男では無いからな、まあ仕方無いなとあき
 
 らめたみたいだけど、せっかくみんなで作った新築のみやげ物屋を使わないのももっ
 
 たいないから、この際バンガローにして観光客でも呼ぼうと言ったのさ。
 
  ディックって奴は不思議な男で頭が切れるわけではないが、村人の気持ちを上手
 
 く読み取る事ができるんだよ、徳があるっていうのかな?
 
  
 
  ああそうだ、裏があるって話だったよな。
 
 実はディック達の村がバンガローを作って観光客を呼ぼうと言い出したらサモリアが
 
 急に自分達の村もバンガローを作ると言い出したのさ、そして今までサンダルウッド
 
 を植えてた土地を切り開いている最中なんだ、でも空港から近いサモリ
 
 アの土地はラグーンに下りるには崖を降りなきゃならないし、第一今から土地を切り
 
 開いても出来上がるのは来年だ、一方ディックたちのバンガロウは来月の4月4日

 にオープンするらしいぜ、戦後は使い物にならなかった土地が時代が変われば利用
 
 価値のある土地に変わっちまう。俺たちブラックマンは良く言うんだよ
 
 「時の流れには逆らうな」ってね。
  
  でもなぜサモリアがそこまでしてディックをライバル視するかって、まあといってもディッ
 
 クの方は別にライバルなんて思ってないがな。実はバヌアツが独立した1980年、
 
 サモリアのコミニティーは全盛期だったんだ、独立して国が外国から受け取ったドネー
 
 ションを分配していたのがサモリアの一家さ、その頃のアニワ島の代表はサモリアの祖
 
 父だったからな、サモリア家はその頃は金があったもんで中学
 
 校を卒業した子供たちをみんな首都の学校に通わせたのさ、今から約30年ほど
 
 前はどの家も一家に一人くらいしか首都の学校に進学させる事できなかった、島
 
 には中学までしかないしな。それをあの家族だけは6人全員を首都やサント島の高
 
 校に進学させたんだ、お金の出所はあんたの想像に任せるがな。
 
 でもそれがあの家が今では廃れちまう事になった始まりなのさ、島を出て行った6人
 
 の子供はみんな都会の生活に慣れちまって、結局3人の娘たちはみんな首都で
 
 であったよその島の男と結婚しちまって島には戻ってこなかったし、戻ってきたのは
 
 長男と三男だったサモリアの二人だけさ、その長男も昨年急に死んじまって、今は
 
 サモリア一人なのさ、やっぱり島で権力を維持するにはファミリーの助け合いは大き
 
 いからな、それに比べたらディックの家族は末っ子のマッケンジーだけが島を出て警察
 
 官になっただけで、残りの兄弟8人は全員島で結婚して子供を作ってるから
 
 自然と人が集まるのさ、そういった理由もあってサモリアがディックを勝手にライバル視
 
 するようになったのも事実だな。とまあ俺の話はこんなところさ、よそもんじゃないとこう
 
 ペラペラは話せないから今日は少し話しすぎちまったようだ。
 
 写真をとるならかっこよく撮ってくれよ!

0 件のコメント: