2010年3月1日月曜日

追悼スパイダー


あまりブログには書いて無いてなかったけど、家にはスパイダーという犬が居ます。 
 なぜあまり書かなかったかというと、スパイダーのことを
書くと止まらないので、なるべく避けていた気がします。
 
 それほど僕らの二人暮らしは楽しいものなのです。 
 
 もともとは二軒先の家の犬だったのですが、僕のことが好きなようで、道をあるいていると後ろから付いて来ることがよくあって、それと同時にウチの裏でゴミを燃やす為に掘ってある穴から食べ物を見つけようとするので、荒らされるよりはましかと思い。最初から与えるようになってしまいました。
 
 不振な人が来るときちんと吠えてくれるし、僕の家にきてくれていたセキュリティーのジョセフが居なくなってからはジョセフの座っていた大きな椅子に代わりに腰掛けてそこで警備にあたってくれるようになり、彼の鳴き声に起こされて夜中に懐中電灯を持って外に出て行くことも何度かありました。
 おかげで一年間泥棒に入られた事はありません。

 でも最初はご飯にありつけるから尻尾を振ってるだけで、誰でもいいんだろうな、くらいにしか思ってませんでした。
 
 本当の飼い主もきちんと居たしね。
 
 そんな生活が続いていたあるとき僕は2週間ほど首都に上がっていました。
 
 戻ったらきっと元の飼い主の所に戻ってるんだろうな?
って思いながらトラックの荷台に乗って飛行場から我が家にたどり着いた時に、なんとスパイダーがジョセフの椅子に座って僕の帰りを待ってくれていました。
 
 僕がトラックの荷台から降りて大きな荷物を下ろしている時に飛びついてきたスパイダーの「鳴き声」というか「泣き声」は今でも耳に残っています。
 少し恥ずかしかったけど、ちゃんと待っててくれたんだねっていう気持ちを込めてきちんと目を見てただいまの挨拶をした時、僕がなでたスパイダーの首の皮がスッゴクたるんでいて、二週間ですっかり痩せていたことに気が付きました。
 その瞬間に、
「お前はもうウチの犬になるって決めてたんだな。」
って確信するととこに、もう自分の犬だと決断しました。

 アレから一年、

 パンの耳はスパイダー、白いところ僕が食べること

 雨の日にはウチの中で寝ても許されること

 パンにバターを塗らないと怒るけど、スプーンで塗る振りだけをすれば納得して食べること
 
 夕方に僕が鍵を持って出てくるとストアーに行く合図なので一緒についてくるけど、持っていないと近所で遊ぶだけだということ
 
 バイクのエンジンの音には凄く遠くからでも反応して迎えにきてくれるところ
 
 鍋からスパイダーのさらに残飯をよそってる途中に我慢できなくて顔を突っ込むと僕に蹴飛ばされること

 など二人の間にたくさんの暗黙の了解ができていました。
 
 来年僕が帰国する事を言葉で理解させる事ができないことが最初は辛かったけど、でもそんなこと考えても仕方が無いくらいにいつも仲良く二人で暮らしていました。
 
 喧嘩が強くて二匹くらいの相手なら簡単にやっつけて戻ってきますが、喧嘩をすると僕に蹴飛ばされるのを知っているので、喧嘩に勝ったのに尻尾を丸めて申し訳なさそうに戻ってきます。
 
 時には耳をかじられてピアスのように穴が開いていたり、よそのゴミ箱を荒らして子供にパチンコで打たれて足を引きずって戻ってきた事もたくさんありました。
 
 犬同士の縄張り争いや発情期の抗争が続く時には一晩中外で暴れまくって戻ってきてはウチの中で飯も食べずに死んだように眠っていた事もあります。
 一週間も続くと本当にきつそうでしたが、それでもよその犬の鳴き声が聞こえると夜中でも飛び出して行きました。
 あきれるほど勇敢な奴でした。そして常に一匹狼でした。
 
 ウチの家の敷地にメス犬以外が進入してくる事はまず無かったです。
 
 そんな彼がすでに一週間も戻ってきません。今までは三日以上はありませんでした。
 元の飼い主に聞いたところ、おそらくガールフレンドができて面倒を見ているのだろうということだったのですが、
ついに一週間経ったところを見るとやはり何かの理由で死んでしまったのだと思います。
 
 犬同士の喧嘩で死んだのか、トラックにひかれたのか、犬を食べる習慣のあるバヌアツ人に捕まったのか、その三つが重なってしまったのか、考えても意味が無いので深くは考えませんが、スパイダーが最後まで勇敢であったろうことは容易に想像ができます。
 
 スパイダーは弱肉強食の野生の掟を理解していたと思うし、死ぬ瞬間まで迷うことなく戦い抜いたと思います。

 スパイダーの死をしってか知らずかこの三日間ほどよその野良犬が我が物顔でうちの庭に進入してくるようになりました。
  
 最初はスパイダーが戻ってきたのか?とおもって慌ててカーテンを開けてみていましたが、もうそんな気配は無いような気がしています。
 
 2年間で帰国してしまう事を説明できないと考えて途中まできちんと自分の犬だと認めてあげなかった事や、それでもあいつが僕についてきてくれたこと、そして結局残されるのは自分のほうだった事などを考えると、同じ男として僕なんかよりもあいつは勇敢であり誠実であり一本筋の通った奴だったなと思います。
 
 本当に尊敬できる君と一年間一緒に過ごせたことは僕の人生にとってとても大切な時間でありまた良い勉強でもありました、君が居なくなったことによって教えられたえられた事もとても多いと感じています。
 
 さようならバヌアツでの僕の唯一の家族スパイダー
 
 そしてありがとう、冥福を祈ります!
 
  

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