2010年3月5日金曜日

がんばれクウィンティル


タンナ島では最近ニュージーランドの農園でりんごやキュウイを取る出稼ぎが流行っています。
 
 半年行って90万円がもらえます。30万は税金で取られて、30万はエージュントに取られて、残りの30万が自分の物になります。 
 
 ウチの村でも結構たくさんの人が行きました。 
 
隣のジョセフも二ヶ月ほど前に出発しました。 

 ジョセフの家族は子供が三人
 
 長女 ティンティナ  6歳
 
 長男 クウィンティル 3歳 
 
 次女 マラ      1歳  です。 
 
お母さんはリーシーと言ってウチの隣の高校の先生です。 

 お父さんが出稼ぎに行ってから三歳のクウィンティルにも少し変化が出てきました。
 
 よく僕の所に遊びに来ては膝の上に乗ります。
 
 バイクに憧れているらしく、バイクして!って良く言います。 
 
 僕が膝を動かしてピョンピョン飛び跳ねさせると
 
 バイクのようにブーンではなくて、パカン、パカンと馬に

乗ってるように口真似します。まあどちらでも良いみたいです。 
 
お父さんが居なくてきっと寂しいんだなー、って思います。
  
そして今年からキンディー(幼稚園)に通っていますが、彼は結構 
 
頑固なので、二週間ほど登校拒否をしていました。
 
 キンディーはウチのすぐ裏なので、みんなが歌ってる声が聞こえま
 
 す。僕が座っていると、妹のマラの面倒をみていたクウィンティル
 
 が走ってきて僕の膝の上でキンディーから聞こえてくる歌声に
 
 あわせて得意げに歌いだしました。 

 「クウィンティルなんでキンディー行かないの?」
 
 って聞いたら
 
 「キンディーには嫌な事があるんだ」  
 
 と答えました。ウーンこいつもなかなか頑固なこだわりを持ってる
 
 な。と思いながらまあ男には時に組織に一人で立ち向かわなけ

ればならない時もあるものなのだ、と彼の反抗を見守ることにしま

した。
 
 1歳になったマラは父親が居なくなってから僕を見ると以前にも
 
まして泣くようになりました。特にリーシーが僕と話しながらマラをだ
 
っこすると、話を止めるまで泣き止みません。きっとマラもジョセフが 
 
 いなくて寂しいのだと思います。 
 
 長女のティンティナは小学校に通ってるので僕が昨年体育の授
 
 業を受け持っていた事もあり、特に変化はありません。

 
登校拒否のクウィンティルは11時になってキンディーが終わるころ

になると友達のウェンディーとモシスをこっそりと迎えに行きます。
 
 それを見た先生がクウィンティル中においで、とやさしくなだめて
 
 いましたが、それには反抗を示しているようでした。
 
 二週間がたって僕が気が付かないうちに彼はまた通うようになっ

ていましたが、3歳にしては長い反抗だったと感じました。
 
 
先日キンディー協会のパレードというかデモ行進とちょっとした集会
 
 があったのですが、みんな珍しくおめかしして出掛けていました。

僕もバイクが故障で失業中だったのでカメラマンとして動向しまし
 
 た。集会の内容は現在バヌアツでは幼稚園は義務教育では
 
 ないので政府からの援助がまったくなく、自主運営になっている
 
ので先生はボランティアだし、建物はボロボロ、学費は一学期に
 
 つき1000円と小学校の倍なのです。
 
 それを訴えるものでした。
 
  10校近くのキンディーがフラッグを掲げてパレードをした後、
 
 それぞれが歌を歌って、偉い人の演説が永遠と続き、昼食が
 
 あって解散しました。

 仲の良いモシスにはお父さんが、ウェンディーにはお母さんが着て

いましたが、クウィンティルのお母さんは学校の先生なので

 付き添いは無し、僕は珍しく親子でいる同じ村の人達を見なが

ら、この人がこの子の親だったのか?と興味深くそれぞれの家族を

観察していました。
  
モシスは何故かご機嫌斜めで早々と父親と一緒に家に戻りました。

 ウェンディーも車に乗って帰って行きました、クウィンティルは誰と

帰ろうか迷ってるみたいでしたが、僕も一人だったので、
 
「クウィンティル、一緒に帰ろう」
 
って言ったら素直に手をつないできました。10メートルくらい一緒

に歩いたらすぐに手を解いて僕の前を走り出しました。
 
 その後姿を見ながら感じたのは
 
子供は時には自分の意思を主張して、時には寂しい思いもして

こうやってたくましく成長していくものなのだな、ということでした。
 
 父親のジョセフがいないこの数ヶ月も彼を子供から少年に変え

ていく大切な時間なのかもしれません。

 自分の個性を大切にして、いろいろなことを感じながら育ってい

って欲しいと思います。
 
 写真はクウィンティル、リーシー、マラとウェンディーです
 
 

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